リスク別の
胃X線検診の研究
国の指針では、50 歳以上の方に対して1~2年に1回、胃X線検診を受けることを推奨しています。
胃X線検査を定期的に受診することにより、胃がんで死亡するリスクは減少します。しかし、偶発症が起こったり、過剰診断(命には影響しないゆっくりと育つがんが見つかること)の心配もあります。こうしたデメリットをできるだけ減らし、早期発見・早期治療によるメリットを最大化するためには、適切な検査の回数を決めて、余計な検査を受けないことが重要になります。
胃X線検診を受けることで大きなメリットが期待できます。しかし、胃X線検査には、検査を行う高い技術や、その結果を判定するための豊かな知識・経験が必要です。そのような環境の整った医療機関は十分ではありません。より多くの方々がメリットにあずかることができ、デメリットを受ける人を一人でも多く減らすことができるようにするための研究にご協力をお願いします。
参加条件
次の条件に当てはまる方に、研究への参加協力をお願いします。
- 検診受診時50 歳から69 歳までの方
- 重篤な病気にかかっていない方
- 現在、がんで治療(抗がん剤の服用、放射線治療、外科治療など)を受けていない方
- 胃切除の手術を受けていない方(内視鏡による切除は除く)
- この研究に協力することに同意した方
※ 研究検診に参加するかどうかは個人の自由です。
研究検診に参加しない場合でも、通常の住民検診にはこれまでどおり参加できます。
研究協力の流れ
- 定期的にご案内するX線検診を3回受けていただきます。初年度は、X線検査と、下記2に挙げた血液検査を受けていただきます。2年目から3 年目までの検診はX線検査だけになります。
- 初年度の検診では、ヘリコバクターピロリ抗体検査(ピロリ菌検査)とペプシノゲン検査も受けていただきます。
- X線検診のとき、アンケートに回答していただきます。
- 5年目、7年目と10年目には、アンケートを送付しますので、ご回答お願いします。
利点・留意点 など
研究検診に協力した場合
の利点
- 無料で血液検査(ピロリ菌検査、ペプシノゲン検査)が受けられます。
- X線検診の案内などのサポートを受けることができます。
- 健康に関する相談が受けられます。
- 研究にご協力いただいた方には、最新医療についてのニュースレターや講演会などを通じて健康関連の情報を提供します。
- X線検診を定期的に受けることにより、胃がんで死亡するリスクが減少します。
- 胃がんになるリスクの低い人の検診回数を減らすことは、より多くの人が検診を受ける機会を増やすことにつながります。それによってX線検診をより多くの方に受けていただくことができ、医療の発展に貢献したことになります。
すべてのがん検診に
関する基本的な覚書
- 検診を定期的に受けていても、がんが見逃される場合もあります。どのような検査でも100%確実に病気を見つけるとは限らないことと、急激に成長するがんがあるからです。
- 検診を受けることで、ゆっくりと成長するため命には影響を与えない「がんもどき」を見つけてしまう可能性があります。
- 検診の結果「がんの疑い」がある場合は、内視鏡検査で細胞を採る検査など追加の検査を行うことがあります。
研究に協力した場合
の留意点
- X線検査を受けた後に、ごくまれにではありますが治療が必要になるような穿孔(腸に穴があくこと)などの合併症が起こる場合があります(0.04%)。
- ピロリ菌検査やペプシノゲン検査が陽性になることで、追加的な検査や治療が行われる場合があります。しかし、健康で無症状な人にとっては必要のない場合もあります。
- ペプシノゲン検査とヘリコバクターピロリ抗体検査(ピロリ菌検査)を受けることで、胃がんになる可能性があるかどうかを予測できますが、そのおかげでかえって心配になる方もいるかもしれません。
- ペプシノゲン検査とヘリコバクターピロリ抗体検査(ピロリ菌検査)のために採血するとき、ふつうの注射同様に痛い思いをしたり、採血部位が赤くなったり、腫れたりすることがあります。まれには、採血によるしびれや痛みなどがおこることがあります。採血によるしびれや痛みなどがおこり治療が必要になった場合、健康被害の補償について個別に検討します。
- 定期的に検診を受けたり、問診票の記入やアンケートへの回答のため、時間を取られることがあるかもしれません。
追跡調査を行います
研究に協力していただいた方には、研究開始から10年間、定期的に次のような調査を行います。そのための手続きは、いずれも市町村、県、国の承認を得て行います。これらの情報は、個人情報として各自治体の研究事務局が管理します。
- 検診結果については、県、市町村、検診実施機関から情報を収集します。
- お住まいの市町村から転居していないかどうかを住民基本台帳で確認します。
- がんにかかっているかどうかを全国がん登録で確認します。
(詳しくは「全国がん登録の利用ページ」をご参照ください。) - 死亡しているかどうかを死亡届で確認します。
- 研究開始以前、あるいは追跡調査の間に住民検診の胃がん検診を受診されたかどうかを確認します。
- アンケートにお答えいただいた内容について、医療機関に問い合わせをすることがあります。
- 胃がんが見つかった場合には、胃がんの部位や治療法などの詳しい情報を医療機関に問い合わせます。
※ 追跡調査を行ってほしくない場合には、各自治体の研究事務局にご連絡ください。調査の対象から外す手続きをします。